どうしてこんなに平均点が高いの?!
“It is only the chance for us to make that change.” (これは変革を行うためのチャンスに過ぎない)
【2008年11月4日 米大統領選を制したバラク・オバマ氏の勝利演説より】
英語 55.3 数学 53.0 理科 51.0 社会 58.4 国語 75.1 (2023年度神奈川県高校入試 平均点)
この数字を見て何を感じますか。国語の平均点が異常に高いですね。この年は問題が易しかったことも理由の一つですが(前年より10点以上アップ)、神奈川県の入試はマークシート方式だからともいえるでしょう(全国では東京、神奈川、愛知、千葉のみ)。他教科は8択などざらにあるのでまぐれでは当たらないのですが、国語の設問の多くは4択です。漢字の読み書きも鉛筆で塗るのですから点数は否が応でも上がります。
ただ、それを差し引いても、全国的に見て“易しい”です。全国に塾関係の知り合いがいますが、見せるのを躊躇います。75点という平均点は通常あり得ないです(勿論24年度は難しくなるでしょう)。受験生の皆さんは、模試や過去問で他教科より10点は高く取っていないと一定のレベルには達していないと頭に入れておいてください。
どうすれば点数が上がるの?
国語に限らずですが、“考える”ことです。墾田永年私財法というワードを覚えても点数になりません。それはどういう法律ですか? どうしてそんな法律ができたのですか? 制定した政治家になったつもりで、施行された民衆の立場になって考えてみてください。墾田永年私財法なんて言葉を暗記するより、労力はかかりません。言葉を暗記する必要はないのか? 試しにその内容について思いを巡らせてみてください。制定したら、どんな変化が起こったでしょうか。気がついたら覚えています。学ぶとは、そういうことです。
試験問題を一つでも解いてみたら気づくと思いますが、考えないで答えを出そうとする人が点数を取れないように巧妙に作られています。ー線部を聞かれていたら、その前後しか見ない人を間違えさせようとしています。これからの時代は“考えて答えを導き出す人間”を必要としているというメッセージです。AIにできなくて人間にできることは何ですか? AIは人の気持ちを理解できますか? 昔の人も今の人たちも、美しいものを素敵だと思う心は同じではないですか。そうした本質を捉えられたら、古典は今と着ている服が違ったり、言葉が一部古かったりするだけです。もし結果が伴わずに悩んでいたら、学習方法を変えてみてください。
皆さんが解く問題は人間が作成しています。もしAIが作ったら、おそらく中学3年間の内容を(小学校内容も範囲ですが)満遍なく出題するでしょう。過去問を解いてみてください。現在完了形は毎年出題されていますか(今度の入試には出るかもしれませんが)。人間が作る限り、作為があります。あなただったら、どういう問題を作りますか? 3年生後半だけ頑張ったらある程度点数が取れる問題にしますか? 過去問にそっくりの問題を出しますか? それとも裏をかいて敢えて出しますか? 三単現や分数が苦手な子が多いなら、どこで間違えさせようと考えますか? こういうことを考えながら解くことを“作問者と対話する”といいます。「長い文を読むのが面倒くさい」「ー線の前後だけ見ればいいや」という人にいい点数を取られたら、せっかく労力をかけて作ったのに悔しくありませんか?(笑)こうやって考えていけば、今何をすべきかはっきりしませんか。
作問者も教育者です。決して意地悪ではありません。この国や社会を担う皆さんを想っています。私が出題者だったら、一生懸命頑張った人に良い点数をとってもらいたい。努力が報われる内容にしたい。chance(機会)はひと文字変えるだけでchange(変わる)になります。勇気を出せば、人はいつでも変われます。遅すぎることはありません。頑張って中学校の卒業資格(chance)を得た今、やることは一つしかありませんね。皆さんの大成長を祈ります。