英数学院だより(2021.12月号)
石虎将軍の故事
中学生はまもなく後期中間テストを迎えます。目標を立て、勉学に励(はげ)むと思いますが、目標を達成できるか否(いな)かの最終的な差は、「一念(いちねん)」です。では「一念」とは何でしょうか。今日は、有名な故事を紹介します。
昔、中国の漢の時代に李広(りこう)という将軍がいました。李広の父は幼少の時に亡くなります。
李広は成長して大きくなると、母に「人には皆、父がいるのに、なぜ自分にはいないのですか」と尋(たず)ねます。母は泣く泣く、「父はおまえが小さい時、虎(とら)に食われました。今思っても哀(あわ)れなことです」と言って悲嘆(ひたん)の涙にくれました。
李広はこれを聞いて一度は悲しみ、一度は怒って、「男と生まれた以上、父のあだを取らないわけにはいかない。敵(かたき)と共に同じ天を仰(あお)ぎたくない(必ず殺してやる)、ぜひとも復讐(ふくしゅう)したい」と心に誓(ちか)いました。
これより毎夜、虎のいそうな野辺(のべ)に忍(しの)んでチャンスを伺(うかが)います。そして、ある日の夕暮れ、草むらをかすかに見渡すと一匹の虎(とら)がうずくまっていました。李広は大いに喜び、これこそ父の敵と矢を放ちます。すると手ごたえがあり、矢は突(つ)き刺(さ)さったのです。
李広は「あら嬉(うれ)しや、日頃の念願(ねんがん)が成就(じょうじゅ)した」と喜びましたが、近付いてみるとこれはどうしたことか、虎ではなく一つの大きな石でした。しかも矢は羽ぶくらを過ぎた所まで刺さっていました。李広は大いに驚き、我が弓勢(ゆみぜい)が勝れているから矢じりが立ったのかと思いましたが、あまりにも納得(なっとく)がいかなかったので、石が柔(やわ)らかかったからかと思い、試しにもう一度矢を放ちます。矢じりは砕(くだ)けて飛び散ってしまいました。
さては初めの矢が立ったのは父の敵(かたき)の虎と思う一念が岩を通したのであろうと、大いに感嘆(かんたん)して帰宅したのでした。これより李広を石虎将軍と呼ぶようになったそうです。
目標を実現するために必要なのは、一念の強さです! 「絶対やってみせるんだ」という強き深き一念を!
オススメの本紹介 鳥山美桜さんセレクト vol. 5
「サンタクロースを殺した。そして、キスをした」 著:犬君 雀 出版:小学館 ガガガ文庫
・あらすじ
クリスマスなんて、なくなってしまえばいいのに……。そう呟(つぶや)いた僕の前に現れた一人の少女。「出来ますよ、クリスマスをなくすこと」彼女の持つノートは、『望まない望みを叶(かな)える』不思議な力があった。その力でクリスマスを消すためには、クリスマスを好きになる必要がある。そのために疑似(ぎじ)的な恋人関係を結んだ僕たちだったが——。
・オススメの人
所謂(いわゆる)『ライトノベル』に分類される作品だが、全く『ライトノベルっぽさ』は感じさせない。それどころか、ライトノベル特有の『読みやすさ』だけを取ったような小説。難しい言葉や凝(こ)った文章が苦手な人に薦(すす)めたい一作。
「自分の居場所なんてどこにもなくて、みんなが簡単にしていることができなくて、笑おうとしたって涙が出るだけで」どれか一つでも当てはまる、どことなく人生に不満を抱いた、どこか寂(さび)しい、なにか大切なものを失っている気がする、捻(ひね)くれた。なにか一つでも心当たりがあるなら絶対に読んでほしい。否(いな)、読むべきだ。